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本の流通改善をめざして(委託制度・再販制度の問題点)

出版業界の不振が言われ始めて、10年以上になる。
特に昨今、話題となっている「返品率40%超え」は、書店・取次・出版社にとって死活問題となっている。
流通問題の解決なしには業界の先行きがみない状況である。
返品はどこそこの出版社が多いというのではなく、各社程度の差こそあれどもにたりよったりの状況にあり、もはや業界関係者や知識人に問題解決を委ねても解決策が出てこないどころか、返品問題と売上不振の原因はいままでいろいろな方面から、さまざまな議論がなされてきたが、これといって対策がなされてきたためしがない。

売上不振になれば利益の確保へと、いままでの解決策は先送り形式の手数料UP型が主流であった。
書店は取次に入り正味の引き下げを交渉し、取次は出版社に同じく引き下げを要求し、さまざまな手数料のUPを要求してきている。
最終的に出版社は、それらの要求を飲むことで利益獲得のため、定価を上げざるを得ない状況に陥ってしまったのが、現在の出版業界と認識している。
業界三者の利害が対立しているとともに、業界を取り巻く状況が年々悪化の一途をたどり、放送・出版の使命は終わったとも言われ始めている中で、ここにきて来てようやく委託制度・再販制度の問題も議題に登場するようになってきた。

再販制度とは一言でいえば「書籍は定価で販売する」ということである。こう書くと問題がないようにみるが、実は問題が山積みである。
読者・書店からみると旧版・傷んだ本、賞味期間の切れた(?)本、大量に買っても(1冊でも1000冊でも同じ値段です)、とにかく店頭では定価で販売しなければならない。
バ−ゲンや景品を付けるなど端から禁止であり、法律違反となる。
(厳密に言えばポイント制なども違反と言われたが、近年は多少緩やかになっているようである。)
用はどこも同じ価格での販売であり、価格競争という原理は出版業界では働かない原理となっている。

取次にとっては全国の書店と取引条件を個々に見直さなければならないし、いままでのような大手版元主体の送品形態から個々の出版社・書店条件が加味され、ますます経費がかかってくる。大手出版社に依存している取次としては、できない相談である。


版元にとってこれが一番の問題と考えている。
一企業として商業出版の面もあるが、多くの中小出版社にとって、出版とは「文化」であり、その出版社の存在意義でもある。
全国に同じ条件(定価)で出荷し、読者に届ける、「文化」にお金の差があってはならない。また、定価の違いで売れ行きに違いが出るわけがないと思っている。
また、個人的にではあるが某有名作家本人から自分の本が定価より安く売られるのは不本意である。そのような出版社からは出したくないと言われたことがある。商業と文化の折り合いがむずかしいのが出版社である。
公正取引委員会においても再販制度の見直しと取次の寡占化は独禁法違反と言っているが、結論は先送りになっている。

委託制度とは、出版業界の特徴で、簡単に言えば「返品できます」という制度である。条件として書籍6カ月以内と条件が付いているが、有名無実であり、業界のガンである返品率40%の温床となっている。(他の業界、どこに返品OKの業界がありますか?)
だからと言って返品いつでもOKと書店サイドの軽い気持ちは問題である。
以上の様に委託制度・再販制度とは一言でいえば、書店にとって「定価」で売り、売れなくなったら「定価」でいつでも返品できる都合の良いシステムであり、中間に位置する取次にとってもリスクのない制度といる。


書店の問題点
その都合の良いシステムに乗っている書店の業績が悪化し、廃業が進んでいる。2000年に20000件の書店があったが、2009年には1500件に減っているという事態をどう捉えるか、書店サイドの問題点は多岐にわたり、個別の書店・店舗ごとの特殊性を加味しなければならない。なぜなら書店の形態もさまざまであり、ナショナルチェーンと呼ばれる大型書店、地方有力書店、外商中心の書店、街の本屋さんなどなど。一言ではまとめられないが、おしなべて前に述べたように委託・再販制度に乗りリスクを負わないで経営できた時代が終わろうとしていることを、認識しなければならない。

書店経営の問題点の第一は利益率の低さにある。多分経常利益率は2%を切ると思われる。
書店への入り正味は78%、書店は22%の利益が得られることになるが、人件費・家賃等経費の比率が高く軒並み赤字に転落する。
駅前一等地に出店すれば敷金は膨大な金額と思われるし、売上歩合・長時間営業による人件費の高騰、そして万引き。(万引きにより閉店に追い込まれた書店は数知れない。この問題は別に述べる)
書店売上において、営業経費が前面に出てくることにより、書店店頭は売上確保の品揃えになり大手出版社中心に営業され、売れれば大量仕入、売れなくなるとすぐに返品が繰り返され、一時期問題となった「金太郎飴書店」が出現する。
読者にとってどこも同じ品揃えであり、書店の個性などあったもんではない。また、本を注文した場合でも、いつ入荷するのかわからない状況でもある。
(この問題は書店と言うよりも業界の問題であり、書店に責任を転嫁するのは、酷なことは十分理解している。アマゾンを始めとするネット書店が隆盛した要因の一つでもある。この問題も別に述べる。)
書店が個性的でなくなり「本」という文化が、消耗品として販売されてゆく現実が書店を苦しめ、業界の低迷を招いた本当の元凶と思っている。
大量生産、大量販売と大手版元が狼煙を上げ、大手取次が運び、大手書店が販売するといった側面を忘れてはいけない。

流通の問題点

流通とは業界にとって大手2社の日本出版販売とト−ハンを意味している。この2社で出版流通の70%のシェアを持ち、業界に君臨している。1冊の本を全国津々浦々の書店の送り届ける流通網は宅配便業者顔負けである。
流通という面からみれば出版社・書店にとって強力なパートナーであるが、しかし、ひとたび流通を離れるならばその巨大さは、特に中小出版社・書店に脅威をもたらす。取引先である出版社や販売先である書店の立地、規模、はたまた経営状態すら把握し、場合によっては融資までその視野に入る取次は業界の銀行も兼ね備えるモンスターである。

この取次に出版社、書店の立場から問題を提議していこう。
まずは出版社の立場から。
第一の問題点として、
出版社にとって出版物は読者に届ける手段として、全国の書店に在庫してもらいたいと思っているが、製作部数の関係もあり、現実的ではないと、認識している。そこで取次の書店情報に頼り新刊を配本してもらうのだが、この配本の仕組みが問題なのである。
出版社にとって専門書は、一定規模のその関連ジャンルが展示されている店に送品して欲しい。書店にとっても必要なことと考えている。しかし、この配本システムが活用していない。活用しているのであれば、冒頭述べた返品率40%という数字が出てくるわけがない。
書店の実態が全く反映されていないばかりか、出版社の意向も、無視された大手書店中心の配本パターンである。
ここに来てようやく反省がみたのか、「もっと細かな配本の仕組みを考えます」と取次役員が言っているが、実現にはまだまだ時間がかかりそうである。零細な中小出版社にとって全国の書店情報を知ることは不可能であり、その情報は通常の取引形態・配本依頼に入っていると考えている。
故に出版社はいままで取次を信頼し、正味引き下げ交渉や、返品手数料等の徴収にも応じているのである。ここに来て売れません。「返品率が高いので今回の新刊は前回の半分にしましょう」等の発言は納得できないわけである。
配本に関して出版社の意向も取り入れ早急な整備を望みたい。

第2の問題点として通常の取引とは何かという問題である。
他業界ではないことだが、新刊で先の配本制度を活用した場合、書籍の商品代の入金は6カ月先となる。なんと半年先なのである。これで健全な商業行為ができるわけがない。出版社にとって印刷・紙代は原則翌月精算であり、編集費もかかっているのである。また、書店に対しては翌月精算となっている。この「差益」はいったい何なのか。
書籍という販売まで時間がかかる商品であることを、加味しても異常であり、書店サイドからの金融返品という事態を招き、返品率を高めている。
更に問題なのが、取次株主である大手出版社等は翌月精算であり、歴然と差がある。同じ書籍という「文化」を扱いながら大手出版社偏重主義がまかり通っている。中小出版社としては無理を言っているわけではなく、大手出版社と同じ土俵に乗せて欲しいと単純に要求しているだけのことである。

第3の問題点として大手出版社・大手書店偏重主義から発生した取引高に応じた配本パターンは、街の本屋さんにベストセラ−本がいかないといった問題まで及んでいる。逆に多くの書店にとって不要なセット商品の送り付けまでいっている。(内容は当然大手出版社の書籍が大半を占める)
大手書店にベストセラ−商品が山と積まれ、街の本屋さんには在庫ない。
読者の「本」や「本屋」に対する信頼を失わせている現状を理解していないのではないだろうか。

取次はいまこそ原点に返り、繰り返しになるが
流通網の再整備こそまず果たすべき責務ではないだろうか。大手株主たる出版社を優遇するのではなく、いみじくも文化産業を述べているのであるから、広く業界の裾野を広げるという視点に立ち返り
出版文化に貢献するという認識を持ってもらいたいものである。

流通の問題点を述べるとき出版に携わる人間にとって理性的では、いられない。


出版社としての対応

出版不況と言われながら、出版点数は毎年伸び、一日200点を超える。毎日これだけに新刊点数が書店店頭に溢れ、書店の棚は有限であるから、読者が目的の1冊を手に入れるのはかなりむずかしく、今日入荷した新刊が、明日には店頭から外され返品されるのは日常茶飯事のことである。特に大手版元以外の中小専門書版元にとって売れなければ即返品となってしまう。
販売窓口を書店に依存している中小版元にとって、今や取次・書店は志を同じくする仲間とは思えない状況にある。

もともと出版で財を稼ぐという発想は全くといってない中小版元であるが、今や生き残りをかけて流通を見直すときが来ている。
版元にとって書籍を読者に届けるのは義務であり、企業活動の原資につながる。書店・取次の「お客様が来店し、商品を選定し、買っていただく」という姿勢とは大きく違う。書籍は一点一点違うからである。メーカーである版元にとって理想的な販売形態は「読者直接販売」いわゆる「直販」である。欲しい読者に確実に届けるには「直販」以外にはない。「直販」といってもテレビ宣伝ではなく、インタ−ネットの活用にある。ネット社会が進行し、買えないものが時代であり、「ネット販売」に軸足を移行する時代となっている。
アマゾンや楽天の隆盛は時代の必然であろう。(アマゾン・楽天といえども書籍供給は取次に頼っているのだが、対応がリアル書店と全く違うことに業界はもっと注目しなければならない。)
具体的にはHPの整備である、SNS、ブロガー等の活用により読者への告知、購入へと結びつけていくことにある。
こう書いているが、全くの門外漢なので、いろいろと勉強しながら、出版活動を続けていきたいと願っている。

 「企画」も再考すべき問題がある。
年々増える出版物は業界を潤すどころか疲弊の要因にもなっている。著者・編集者にとって「出版=本にすること」は基幹の仕事であるが、質(内容)・量(部数)・時期はともに問題はないのだろうか。新刊をみると「こんな本を出すの?」「まるで自転車操業・金融出版」に近い出版物が多数見受けられる。
誤解のないように書き加えるならすべてのすべて「企画」は生きています。否定しません。タイミングの問題と企画の切り口が問題なのです。単なる焼き直しや「柳の下のどじょう2匹」では、今や返品の温床になることを言いたい。
また、市場の需要を考えない出版は本来の「志」である出版の足かせになる場合もあることを言いたいのである。
弊社も持って他山の石としたい。


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